亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

ザイ達親子が返り討ちにした狩人は、きっとそのどちらかの一つ。………だとすると…。

「………………もう一組み………今もザイ達を狙って動いている狩人がいるって事だよな…?」

店の奥に引っ込んで行くコムに向かってアオイは話し続ける。
商売道具をせっせと片付ける小柄な背中は、やや面倒臭そうに答えた。

「……ああ。………もう一組み……遅れて依頼を引き受けた狩人の親子がおるわい…。…………母親とその息子のな」

「親子…?……………………その二人の名前は?」















「―――………名前は………」







































「………」




目前の真っ白な丘を見上げ、ザイは無言で腕を組み、眉をひそめた。

その隣りに同じ様に佇むレトも、眠くはないが眠そうとよく他人から言われる目でぼんやりと眺める。

「………父さん……………ここ………森じゃなかったっけ…?」

少々頼りない潤覚えの記憶を辿り、レトは呟いた。

………そう、確かここから先は……木々が鬱蒼と茂った森が広がっている筈だった。
筈だった、のだが。

……どうしたものか。
果てしなく続く景色は凍て付いた森ではなく、雪だけが積もりに積もった雪山だった。

木々の姿など何処にも無い。




ザイはその場で屈み、雪の丘の表面を軽く撫でた。
……そこに広がるのはガチガチに固まった雪ではなく、サラサラとした細かい粒子の雪。
……新雪と同じ…。






「………レト、お前の考えを言ってみなさい…」

「………『嵐』………いや……雪崩…?」

「………惜しいな。これは『嵐』による、雪崩だ」
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