亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
その『嵐』は近年、発生率がやけに高くなってきている。
哀れなことに巻き込まれてしまったらしい人間の成れの果て。…カチカチに凍て付いた死体を、よく発見する。
「………『嵐』は、あまりにも強大な威力を持っているため……爆発した辺りの地形がよく変わる。………この、今はただの雪の山だが、元は森だった場所も……『嵐』による影響だ。………………何処かの雪山の雪が、強風でごっそり飛ばされてきたらしい…」
常に空を見上げ、『嵐』の有無を確認せねばならない。
自然の猛威には、人間の産物である悪意など存在しないのだから。
「………………父さん……この雪の丘……雪がサラサラし過ぎて歩けないよ……」
地盤が無い柔らかな雪の丘。
…下手をすれば、片足どころか身体全部を雪に突っ込んでしまい、抜け出せなくなる。
この丘の下には、広々とした針葉樹林の群れが埋もれているのだ。
「………では……この丘に沿って歩かなければなりませんね……」
他に進む術は無いのだろうか、とサリッサは不安げな表情で呟いた。
「………森一つを避けて行く様なもの。………だいぶ遠回りになりますが………致し方ない…」
「………えー………迂回するのかい………?………面倒だなぁ…。………頑張れば進めそうな気がするけど。………ほら、部分的には固い所もあるよ…」
ザイの脇を通り抜け、一人勝手に雪の丘に登り始めるユノ。
サリッサは慌てて我が子の背中に叫んだ。
「…ユ、ユノ!?降りてらっしゃい!!……あああ…危ないわ…!?」
顔面蒼白でオロオロと同じ場所を行ったり来たりするサリッサ。