亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
………ここは、貪欲な熊の性格を発揮させ、忍び込んで蜂蜜を取る方がいいのか。
それとも、こんな駄目駄目な熊にも良心くらいあるのだよ…と二号の看病でもすべきなのか。
………熊の縫いぐるみを握り締めたまま、そんな事を大真面目に思案していると、向かいに座るルウナは笑顔で首を傾げた。
なかなか答えを出さない自分に飽きてきたか。…このまま何もしなければ、痺れを切らしてままごとを止めてくれるだろうか。
そう思いながら、ひたすら無言でいると…。
「………何にもしにゃいの?」
………何故か、少しウキウキしている様な……機嫌の良い声をかけられた。
「………あ、いえ。…その…………………どう致そうかと……考えてはいるのですが……………なかなか…」
苦笑を浮かべて、ぎこちなく熊の縫いぐるみを揺らした。
ルウナはそんな使者に対し、更に笑みを深めて呟いた。
「………盗まにゃいの―?………………バリアンは」
「………は…?」
………一瞬、何を言われたのか分からなかった。
目の前の可愛らしい王子の笑顔は、輝きを失う事無くそこにあり、そしてピクリとも動かない。
代わりに、その小さな唇はよく動いた。
「………バリアンなら、好機!って思ってすぐ盗んじゃうんじゃないかにゃ―…って思ってたんだけど―………違うの―?」
「………」
…バリアンなら?
いつの間にか………この幼稚な舞台に立つ配役が………変わっていた。
王子の何気無い一言で。