亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
ルウナは、両手で握ったミツバチの縫いぐるみをクルクル回したり突っ突いたりといじくっている。
が、しかし………その向かいに座る使者は………何故か、顔面蒼白だった。
目の前に横たわる熊の縫いぐるみを見下ろしたまま、ピクリとも動かない。
………何かあったのだろうか。
怪訝な表情を浮かべてアレクセイは歩み寄ろうとした。
………が、その途端。縫いぐるみを見下ろしたまま、ルウナは明るい声を発した。
「ちょうどよかったね。アレクセイ……………………………お客様がお帰りだよ」
ルウナが含み笑いで言った直後、使者は勢いよくその場で立ち上がった。
椅子が後ろに倒れたが、直しもせずに使者はズカズカと真っ直ぐアレクセイに歩み寄り、文の入った筒を半ば強引に奪い取った。
……あの震えは…怒っているのだろうか。それとも………。
一言も何も言わずに大広間を出て行く使者の背中を、ぼんやりと眺める。
勢いよく扉が閉まり、重苦しい轟音が室内に響き渡った。
………シンと静まり返る大広間。
自分がいない間に何があったのだろうか。
答えを求める様にアレクセイはルウナに振り返るが………当の本人は我関せずと鼻歌を歌い始めている。
「………ルウナ様。………客人を苛めたら駄目ですよ」
……ポツリと、ダリルが笑みを浮かべて呟いた。駄目と言っている割りには、やけに楽しそうだ。
「ルウナ、苛めてないもーん。リルリルみたいに苛めっこじゃないよ―!ねぇ!アレアレ」
ニパッ、と可愛らしい笑顔を向けて来る王子様。