亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


ナイフか何かが飛んできたのかと咄嗟に身構えたが、違った。

見えない空気の、矢の如き衝撃波。

しかもその矛先は自分ではなく、その先の……もっと先の………。








「………ユノ!!」


いけない…と分かった時には………既に、遅かった。



ドールの鎚が放った鋭い衝撃波は、真っ直ぐユノの方へ突き進んだ。

……その勢いは、止まらない。



黒い石を運ぶ衝撃波は、決して脆くはない筈の氷の壁を、いとも容易く突破った。

一枚、二枚、三枚……と、ユノを守るかの様に重なっていた壁は、音を立てて崩れていく。





黒い石が、彼に迫る。















「―――………っ…」






















………激しい頭痛と眼球の痛みに苛まれる中、ユノはレトの声を聞いた気がした。

彼の声が。僕を呼ぶ声が。




一瞬、踊り狂っていた意識が元に戻り、ユノはハッと我に返った。
四方八方を見回せば、何処もかしこも半透明の冷たい壁。


………これは何?どうして氷の壁が?
………僕が………僕が…作り出したのか?


………眼球が痛み出した後の事は、あまり覚えていない。………しかしこの様子からすると、恐らく自分はまた…“白の魔術”を暴発させてしまったのだろう。


呆然と立ち尽くすユノは、地面から映えた氷の壁をまじまじと見詰めながら……その煌めく表面に、手を伸ばした。







指先にひんやりとした氷の冷たさ、固さが伝わってくる………筈だった。






…ユノの手が壁に触れるか否かというその時。













目の前の壁は、突如、粉砕した。

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