亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
…何か強烈な衝撃によって、脆くも壁は反対側から叩き割られた。
細かな氷の粉塵が舞い、冷たい空気が髪を撫で、頭からユノを覆う。
―――何が、起きたのか。
それを理解する事が出来ずにいる、大きく見開かれたユノの視界に………真正面から飛んでくる何かが、映った。
ユノの赤い両眼は、ゆっくりと近付いてくるそれをただじっと見詰めていた。
黒い………点の様な……小さな…。
小さな。
―――…黒い点は不意に加速し、瞬時に………………ユノの目と鼻の先に迫り………。
―――…ピタリと、静止した。
視界いっぱいに映るそれは、黒くて、薄汚れていて、手の平に収まるくらいの大きさで、不格好で、何処にでも転がっている様な………ただの、石。
石。
何も無い空間で、目線の高さで静止する、黒い、石。
黒い。
石。
底無しの、無限の闇が広がるその黒。
それは何の前触れも無く。
漆黒の光を、放った。
「―――…うぁっ!!」
太陽の光よりも異様に眩しい、黒い光。
ユノはのけ反り、思わず目を瞑った。
ユノの頭から爪先にかけての全身を、肌を刺す冷たい光が覆う。
………それと同時に、ユノはカッと目を見開き。
全身に駆け巡る強烈な違和感に、身体を震わせた。