亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
(………息が………っ…)
レトを襲ったのは、凄まじい寒気と、脱力感。
身体を動かした後のあの疲労感とは、まるで訳が違う。
身体の奥底から、体力だとか気力だとかの一切が………抜けていく。
いや………目の前の光るこの石に……吸われている。貪欲に。貪られて…。
「………ぁ………っ…………」
…呼吸をしようにも、肺が空気を吸い込んでくれない。
震える身体を押さえようにも、足が支えてくれない。
倒れる身体を庇おうにも、両手は動いてくれない。
眠くないのに、瞼は勝手に下りていく。
頭が真っ白になって。
真っ暗になって。
意識が何処かに、落ちていく。
音も無く。
底の見えない、底の、底に。
身体の真ん中で単調なリズムを刻んでいる…どこか落ち着いていて、どこか懐かしさを感じる小さな音が。
次第に、小さくなっていく。
…止まりかけているこの音は、何だろう。
………僕の、心臓だろうか。
ちっぽけな、命だろうか。
………。
………。
…。
―――
………僕は何処まで、落ちていくのかな。