亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



…“白の魔術”を止める術としては、『空の魔石』は効果抜群だった様だ。

ドールの放った空の魔石はユノの魔力にすぐさま反応し、放出されていた魔力を余すところ無く吸収していた。
…思っていた以上に魔石は貪欲で、魔力以外の他にも吸い付いた様だった。



………ユノの生命力をも、石は食らった。






腹いっぱい吸い付くし、役目が終わったかの様に光るのを止めて魔石が地面に落ちるのと、力無くユノが地に倒れるのは、ほぼ同時だった。



動かぬ小さな身体が霙混じりの雪畳に横たわるや否や、“白の魔術”の暴走は止み、彼を包んでいた氷の壁も吹雪の竜巻も消え失せ……辺りは最初の猛吹雪に戻った。






「―――…ユノ………ユノっ……!?」


そう叫ぶ今の自分はきっと、情けない顔をしているに違いない。

…じんわりと熱い目頭や涙で歪む視界になど気付くことも無く、レトはユノの元に駆け寄った。

握り締めていた剣を鞘に納め、弓をその辺に無造作に放り投げ、積雪に横たわる彼の身体を起こした。



触れたユノの身体は驚く程冷たくて、妙に軽かった。

真っ白な粉雪を払い除け、乱れた彼の青い髪を避けて見れば………血の気の無い、人形同然の…青白い顔。

……人形同然。もしかすると人形なのではないだろうか…と、一瞬我が目を疑った。


頬に赤みは無く、瞼は固く閉じられ、うっすらと開いた小さな唇は青みがかった紫色を帯びていた。




(………………息を……してない……!)

慌てて手袋を取り、彼のその細い首に指先をあててみたが……案の定、脈が無かった。





「………ユノ………ユノ……ねぇ………起きてよ…起き…て…」
< 605 / 1,521 >

この作品をシェア

pagetop