亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

まだ幼い彼の端整な顔を覗き込み、指先で青白く冷たい頬を撫でた。

……いくら揺すっても、手を握っても、呼び掛けても……ユノは、目を開けてくれない。



…彼は…ユノは………死ん……で…。


(………………そんな訳ない……そんな…訳……!)

ユノが、死ぬ筈が無い。
絶対に、絶対に認めない。彼はまだ生きている。生きて…。



「………!?」

反射的にユノは傍らに横たわる弓を掴み取り、真後ろに向かって大きく振った。

ブンッ、と弧を描く長い弓は空を切り、こちらに真っ直ぐ飛んできていたナイフを弾き返した。

小さな投げナイフはクルクルと回転し、木の幹に突き刺さった。






………ゆっくりと振り返った先には、ナイフの持ち主であろう、無表情で佇むバリアンの少女の姿。

巨大な鎚を肩に抱え、少女はゆっくりとした歩みでこちらに向かってくる。


……レトは動かぬユノを守るかの様に、彼の頭を両腕で抱えた。
殺気を露にする少女を…ドールを……レトは大きく見開いた瞳で凝視する。





「………………どうして…こんな事をするの………」

「………」

震えるレトの言葉に、ドールは何も答えない。
ただただ、ゆっくりと、距離を縮めてくるだけだ。











「………どうして…?………ユノは………何もしていないのに…………王になりたいだけなのに……何にも悪い事なんかしてないのに………」




「………」




「………明るくて…何でも知ってて…よく笑ってて………………狩人の僕なんかを………友達にしてくれて…………………良い子なんだよ…?………僕みたいに……人殺しじゃないんだよ……?…………………何で…?…………何で?」
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