亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
目尻に涙を溜めて、自分に問い掛けてくるレトを見詰めながら……ドールは、唇を噛み締めた。
「……………どうして…!………どうしてユノを殺すの!!どうして王にならせてくれないの!!何で邪魔するの!!」
「―――………うるさいっ!!」
互いの距離があと数歩の所でドールは立ち止まり、耐え兼ねた様に声を荒げた。
…途端、少し離れた場所に、上空から火柱が降り懸かってきていた。
……頭上を飛び続ける赤い鳥が、こちらに向かおうとするザイとサリッサの進行を妨げていた。
次々と放たれる火柱の向こうに、忌々しそうに鳥を睨み付ける父の姿が見えた。
………今、ユノを守る事が出来るのは、自分一人だけだ。
「………そこを退きなさい、狩人の坊や。………とどめを刺さないといけないのよ」
そう呟くドールに、レトは眉をひそめた。
………とどめを刺す?
………つまりユノはまだ………やはり…。
(………生きてる…)
…ならば尚更、ここから退く事など出来ない。
レトはユノを抱える腕に力を込め、鋭い少女の眼光を睨み返した。
「………嫌…」
「……あんたも死にたいの?……坊やは関係無いわ。………退いて」
「…嫌………!」
「………っ……退きなさいよ!」
「…嫌!!」
「…退けっ!!」
「嫌だ!!」
頑として譲らないレトに舌打ちし、ドールは肩に抱えていた鎚を地に下ろした。
小さな地響きが、互いの間に生じた。
「…往生際の…悪い、ガキね!…ただ護衛として雇われた狩人の分際で………貪欲な坊やだこと!そんなに金が欲しいの!」