亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
汚いあたしが、映っている。
何も信じないと誓ったあたしが、あそこにいる。
独りだけのあたしが……あそこに立っている。
嫌。…嫌。
全てを捨てて来たのに。
全てを断ち切って来たのに。
あたしの決意を、揺るがさないで。
「…くたばれ…くたばれ…!…………く、た、ば…れぇ―!!」
―――…ドールは重い鎚を構え、頭上に振り翳した。
……奇妙な絆で離れない、幼い二人の少年に向かって。
懇親の力を込めて。
何処からか、父の叫び声が聞こえてきた。
甲高いサリッサの悲鳴も、重なって聞こえた。
大丈夫だよ、父さん。
ユノを抱えたこの状態で動けるかは分からないけど。………僕………死なないから。
大丈夫だよ、サリッサさん。
ちゃんと……ユノは、守るから。
死なせは、しないから。
頭上から垂直に下りてくる鎚を見上げ、レトは、瞬時に鞘から抜いた剣を構えた。
剣一本で防げるかは分からない。
もし無理ならば………この身を盾にしてでも…。
何としてでも。
「ガキ同士で何をしているのだ」
それは、突然だった。
突如何の前触れも無く、聞いた事の無い第三者の声が、二人の間に割って入ってきた。
同時に。
ドールの鎚は、宙を舞っていた。