亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
10.その手は、届かない
暗い所とか。
大きな獣とか。
お化けだとか。
……皆が怖いっていうものは、僕、あんまり怖くないんだ。
何も見えない暗闇は、敵の目から僕を隠してくれるし。
大きな獣は、実は大人しくてね、よく見たら本当は可愛いんだよ。
お化けは………よく分からない。
時々話し掛けてくる雪の精とか、風の精とは違うのかな?
全然怖くないから………周りが驚いていても、僕だけ無表情なんだ。
さすが仏頂面のザイの息子、とか……よく、言われるけど。
周りは、知らないだろうけど。
僕…。
本当は、凄い怖がりなんだよ。
凄い泣き虫なんだよ。
気が小さくて、臆病でね。
父さんがいないだけで………物凄く、不安で、怖くなるんだ。
すぐ泣いちゃうんだ。
父さんがいないなんて、考えられない。
…これからもずっと一緒だから、そんなこと無いけど。
………僕には、父さんしかいないんだ。
僕の中は、いつも父さんでいっぱいなんだよ。
母さんがいない分、全部、父さんなんだ。
父さんの事なら、僕、何でも知ってるの。
父さんね……何か、僕に隠してるんだ。
ずーっと昔から、何か隠してるんだ。
でも、良いんだ。
父さんが隠し事してても、僕は気にしないよ。
僕も……父さんに、隠し事あるから。
父さん。
父さん。
……僕ね。