亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
視線が重なっていなくても、顔を見合わせなくても。
『存在』という名の、巨大な威圧感を………びしびしと全身に感じる。
目を逸らしても、見られている……全てを、見透かされている………そんな気がしてくる。
蛇に睨まれた蛙の様に、身体は、ピクリとも動かない。
とにかく………大き過ぎる。
例え様の無い程……この女性の存在は、大き過ぎる。
何と言うか………こうやって見ているだけでも、恐れ多い。頭が高い…とか思ってしまうのは何故だろうか。
隠しても隠しきれない高貴な…何か見えないものを宿す彼女。
………目を逸らしたいのに……逸らせない。自分が何故こんなにも緊張しているのか分からない。
(………………何………この…人……)
巨大な威圧感を前にして、身体はすっかり強張ってしまっていたが………そんな中で、ドールはハッと我に返り、鋭利な剣先を突き付けられている事に気が付いた。
………金髪の女が握る、青白い光沢を放つ剣。
長さも厚みもある大きな大剣は、見た目通りかなり重い筈なのだが、あろう事か彼女は片手のみで掴んでいる。しかも相当扱いなれているのか………隙が、全く無い。構えてもいないその立ち姿からは、一切の隙が見当たらないのだ。
………まず、街に行けばその辺を歩いている様な女ではない。
それは、確かだ。
ドールは微笑を浮かべる彼女を睨みながら、その場から一端後退した。
突き付けられた刃が追って来るかと思っていたが、女は何事も無かったかの様に剣を下ろした。