亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
当たりそうで当たらない。
避ける度に揺らめく綺麗な金色の髪にさえ、掠りもしない。
このどんよりとした曇り空の下でもその色は輝いていて………何故か、ムカつく。
……赤みがかった茶色の自分の髪と比べ、どうしても…綺麗に見えてしまうが………別に…羨ましい訳じゃなくて。
「………っウザい!!ウザったいのよその髪!!眩しくて目が痛いのよ!!」
「金髪は見慣れないのか?バリアンでは無い色だからな」
フフッ、と笑いながら、ローアンはドールの放つ一閃を華麗な宙返りで避けた。
金髪くらい…仲間内に何人かいるから見慣れてるわ!、と内心で叫ぶドール。
何をしてもサラリと流されながら、自分は風でも相手にしているのかとさえ思えてきた。
何処からともなく乱入し、ドールと対峙しだした金髪の女。
ある意味ドールが一方的な二人の攻防戦を目の当たりにしながら、レトは未だ意識の無いユノの様子を窺っていた。
「………ユノっ………ユノ……」
吹雪の中、彼の顔は雪に溶け込んでしまうくらい真っ白だった。
どうする事も出来ずに、冷たくなっていくユノをただ見下ろしていると……黒く丸っこい何かが視界の隅からヨチヨチと歩いてきた。
「………アルバス…?」
正直な話、またもや忘れかけていた雛鳥が、可愛らしい鳴き声で歌いながら現れた。
「チチッ」
今まで何処にいたのだろうか。
先程の突風続きの嵐で、何処かに飛ばされていたのか。
………もしかすると、アルバスがあの女性をつれて来たのかもしれない。………無意識で。
「………アルバス、知らない人をつれて来たら駄目だよ…」
「チチチ―」