亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
バリアンの王族に反旗を翻す、反国家組織。
王族等からは『賊』と言われている様だか、賊なんてものと同類な訳が無い。
どうしようも無い王族に代わり、国家安泰のため、この国のためにと固い決意を持つ、革命者だと言って頂きたい。
両者の間では日夜消えぬ火花が散っているものの、現在は停戦状態。この今にも触れそうな互いに構える刃を寸前で押し止どめているのは……停戦が続く理由は………………この話の渦中である、ドールにある。
ドールはこの反国家組織の上に立つ者であり、その“長”の、一人だ。
「………………“長”が一人いないってのは……変な感じだな…」
向かい側に座る男が、溜め息混じりに呟いた。
バリアンの反国家組織は、一つではない。
組織は三つあり、それぞれ『赤槍』、『白槍』、『黒槍』と分別されている。
その中でドールは、『赤槍』の長である。
この組織を最初に創設した“老長オルディオ”の元に集うのは、この三つの長とその配下のみ。
だがしかし……いるべき筈の『赤槍』の長であるドールだけが、この輪の中にはいない。
長というものは、赤、白、黒の三つの長が共にいてこそ、長として成り立つもの。
『赤槍』の長が不在の今、この場にいるのは『白槍』と『黒槍』の二勢力だけである。
そして『赤槍』の幼い長は………雪国に行ったまま、何の連絡も寄越さない。
無事でいるのか…それ以前に生きているのか……全く分からない状態が長いこと続いている。
最後に彼女を見たのはいつだったか。
………罠だ、と言う皆の反対を押し切って去って行ったあの小柄な背中が、まだ目に焼き付いている。