亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
三国の王に下された共通の、神からの勅命であるらしいが………どうも釈然としない。
神様は基本我が儘かもしれないが、この命はあまりにも理不尽過ぎる。第一、神は我が子同然の王族を偏愛しているのではなかっただろうか。
その溺愛する子供の抹殺命令など……創造神アレスの言葉とは到底思えない。
………逆らえば天災、天罰……というのはアレスらしいと言えばらしいが。
「………なんでも、その話をドールに話したのは………あの糞眼鏡の側近様らしいじゃないか…」
「………マジかよ…」
糞眼鏡、陰険眼鏡、といったら、思い当たるのは一人しかいない。………自分の手を汚さずに如何にして自分達を片付けてしまおうか、とニヤニヤ笑うあの腹立たしい若者の側近。
長である自分達は何度か奴と面識があるが………いつ見ても、不愉快な男だ。
なけなしの幸せさえも吸い取ってしまう様な悪魔みたいな男。
………奴の顔を思い浮かべるだけで、腹が煮えくり返る。反吐が出る。
「………嘘に決まっている。………あの法螺吹きが法螺を吹かない筈が無い…。………どう思う…オルディオ…」
ただでさえ無口なくせに、その固い口を開けば哲学的な台詞しか吐かないオルディオに答えを求めた。
皆で囲む中央の焚き火から、小さな火の粉が熱気に撒かれて舞い上がる。
赤褐色のしわだらけの瞼がゆっくりと開き、黒真珠の様な瞳が表に出される。
老人は真っ赤な焚き火をぼんやりと見詰めながら………小さく、薄ら笑いを浮かべた。
「―――……嘘か、誠か。…定かではないものは真理に非ず、また人間そのものが真理の中にある故、外界である真理を見る事は適うものではない…」