亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
12.『フローラ』
……私の故郷は、とある小さな里。
第三国家フェンネルの地にある里ですが、城や首都とは無縁の郊外の中の郊外にあります。
周りには人里など無く、深い沈黙の森に囲まれた土地。
外からの客など、滅多に訪れません。同じ国にありながら、首都とは衣食住の文化の違いがあまりにも違いすぎるのです。
そこには、古くからの伝統しか無いのです。
ですから、二年前まであったあの六年戦争でも、我々里の民は、見て見ぬふり。いえ、ただ、無縁だったと言った方が正しい。
戦争がいつ始まり、終わったのかさえ、我々は知りませんでした。
………古くから、王家に仕えてきた伝統ある里。 我々はただずっと、王族から命じられていた伝統を守っているのみ。
忘れ去られようが、捨てられようが、我々は守りつづけるのみ。
私も、その里の民の一人に過ぎない。
ですが、何の因果か。
里に数十年振りに姿を現した、元長の………私の祖父にあたる男が、初対面である孫の私に、城へ行けと命じた。
何と、身勝手な。
単身で里を出て、ようやくその老いた面を見せたかと思いきや。
しかし、今となっては。
あの祖父である老いぼれには口が裂けても言いませんが。
………良かったと、思っております。
…人生で初めて……忠誠を誓えるお方と…陛下という素晴らしき方と出会えたのですから。このジン、一生の誉れに御座います。
……ただ、色々と私をからかいなさりますが。………何ですか、陛下。
…別に………リスト=サベスに恨みなどありません。 これっぽっちも。
……いえ…彼はその…彼女が心底嫌いだと言ってはいますが……。
………………何だかんだ言っても、一緒にいるじゃないですか。………彼女と。
まあ…仕事柄………仕方無いですが。
嫉妬ではありません!