亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
………深い深い湖の底から浮かび上がってきたかの様な、何処か奇妙で、開放感に満ち溢れた感覚。
やっと息が出来る。
やっと空を見ることが出来る。
外気が待ち遠しかったかの様に、身体は無意識に覚醒の準備に入る。
無意識に、瞼が持ち上がる。
長い睫毛の隙間から柔らかな明かりが差し込み、渇いた眼球に小さな刺激を与えた。
…暗闇から一転。
何処もかしこも黒一色から、視界は一瞬…まばゆい白色が惑う世界へと豹変した。
視覚はまどろむ世界に、少しずつ…曖昧な形を見付けていく。
光源らしきものが、視界の隅に映し出された。
赤みがかった、小さな炎。
小刻みに揺れる…儚い明かり。
(―――………灯……ラン…プ…)
最初に見えたのは…それはランプだった。
小さな…天井にぶら下がった……古い…。
(―――…天井………)
ここ、は…。
途端に覚醒した意識は、重く気怠かった手足を動かした。
瞬発力を最大に発揮した身体は冷たい床から離れ、片手は懐に入り……スラリと腰の剣を抜き放った。
光を避ける様に暗がりへと飛び込み、片膝を突いて剣を構え。
………息を整えながら、自分に注がれる幾つかの視線を受け止めた。