亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
夢見る乙女の様に目を輝かせて言うイーオ。
…そのワイルドな狩人の文化のどの点に夢見るのか、いまいち分からない。
…よく分からないがとにかく素敵だと褒められたレトは、照れ隠しなのか目を逸らし、無言でパイの端にかじりついた。
…途端、パイの甘美な味が彼に多大なる衝撃を与えたらしい。
半開きだった両目は見る見る内に大きく見開かれ……そのまま固まった。
…次第に少年の目は何かに酔いしれるかの様にとろん…とほうけていき、もぐもぐと夢中で口を動かした。
…こいつ面白いな、とか眺めていたリストは思ったり。
「…狩人は皆、何に対しても純粋だって聞くわ。…私達街の民と違って、彼等は誇りと共に、神と共に生きている。………一番好きなのは、彼等の人間関係ね」
「…人間関係?」
「ええ。…彼等は、とても孤独な人達でね。………そのせいか、人恋しいみたい。……ちょっと人見知りの激しい彼等は、例え同族でも気を許さないのだけど………友と呼べる人には、誠心誠意を尽くすのよ。……本当の親友は一人だけ。あ、恋愛観もそうよね。一夫多妻の文化とは全然違う………たった一人の相手だけを選んで、生涯愛し合う…素敵な文化。……略奪愛が普通だとも聞いてるわ。ワイルドねー」
略奪だなんてやだわー、と上機嫌で話すイーオと、その向かい側で未だパイをゆっくりと頬張るレト。