亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

それぞれがマイワールドに気持ち良く浸っているのを傍目に、リストは極自然に立ち上がり、その場から移動した。


そのままゆっくりと、リストはイブに歩み寄る。イブはイブで、まだ雛鳥と真剣な睨み合いを続けていた。

こいつもこいつだが、この鳥も鳥だ。
…この下らない状況を打破すべく、とりあえずリストは睨み合う彼等の間に君臨するパイを取り上げた。





―――…瞬間。

凄まじい破壊力を持つイブの固く握り締められた拳と、高く跳躍した小さな雛鳥が目にも止まらぬ速さで突っ込んできたが、予期していたリストは難無くそれらを避けた。


ちょうど食べ終わったところだったらしく、空になっていたレトの皿に取り上げたパイを投げ落とすや否や……リストはイブの後頭部に拳骨を振るった。



…雛鳥は………勢いをそのままに天井辺りの何処かに跳んで行ったので、よしとする。

一方、加減など無視で殴られたイブは痛む後頭部を押さえながら、怒りに歪んだ末恐ろしい般若面でリストに怒鳴り散らした。


「……痛い………っ…いったぁーい!!痛い痛い痛い!あたしからパイを奪い取った揚げ句暴力を振るうってどういう神経してんのこの野郎!!こんな可愛い女の子の頭蓋骨を陥没させて何が楽しい訳!?女の敵!!女の敵め!!宿敵め!!だからいつまでたってもモテないのよ!!ダリルも言ってた!」

「いや、頭陥没してねぇし。別に楽しくないし。………モテるだとかモテないだとか…どうでもいいんだよ!………あの魔王…言いたい放題だな…」


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