亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
「……我が国の望みは…簡潔に言えば……平和。…真の平和というものです。自国の秩序ばかりではなく…このデイファレトも、バリアンも、三大国全ての均整をとることです…」
(………平、和…)
その言葉の意味が、レトは分からなかった。
その平和というものになれば…何がどう変わるのか。どう動くのか。何が得られるのか。
平和って、どんな形をしているのだろう。
…よく、分からない。
「そのためには、我が陛下は…長きに渡り今まで分裂していた三国は手を取り合うべきであると、お考えになりました。それを成すための第一歩としてまず……ここデイファレトの、王政復古。…隣室で寝ているあの少年をバリアンの手から守り……王とすることです」
「…なるほどねぇ」
感心する様に何度か頷き、イーオは微笑んだ。紅茶のお代わりはいかが?、と勧めてきたが、リストはやんわりと断った。
「……神が定めた期日…弓張月まで…もう時間が無い。あと二日と迫っています。…それまでにこの国は王を迎えねばなりません…」
……でなければ…この国は…災いに見舞われる。今でも、永遠の冬季という神の災いがある中で…また更に災いが降り懸かるのは最悪だ。
…目覚めの災い、とかいうものらしいが…どんなものなのかは見当もつかない。
「………しかし我々には、情報が無い。あまりにも少な過ぎる。……イーオさん。貴女は…ここデイファレトの王政がまだあった頃、城に仕えていた数少ない人間の一人だと、聞いています。………何でもいい。何でも、どんな些細な事でもいいんです。…俺達に、何か情報を下さい」