亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
今頼れるのは、この老婦人だけだ。
何でもいい。
何でもいいから。
…そう懇願するリストは頭を下げようとしたが…しわだらけの華奢な手が、それを寸での所で止めた。
…イーオは、変わらぬ笑みを向け、リストの手をそっと撫でた。
「………さすがは男の子ね。大きい手だこと。……だけど、まだまだお若い手ね。………貴方方には、私と違ってまだまだ未来があるわ。無理は駄目よ。………他人から頼られるなんて、随分久しいわね…。………いいわ、教えてあげる。まぁ、最初からそのつもりだったけれどね」
少女の様に可愛いらしく首を傾げて肩を竦めて見せるイーオ。
…最初から、協力してくれるつもりだった。
…何の警戒心も持たず、何故この老婆はこんなにも気を許してくれるのだろうか。
リストは半ば驚きながら、怪訝な表情を浮かべる。
「…何故…。………貴女からすれば、俺達はよそ者もいいところでしょう。そんな輩に何故…」
「………………私はね、二年前……夜明け前だったかしらね。………あの窓から偶然にも………遥か彼方から昇る、真っ白な柱を見たの」
…二年前の……夜明け前。
天に昇る…真っ白な、柱。
「………それ、は…」
「………祝福の光よ。…貴方方の国、フェンネルの王様が王座についた時の……神からの祝福の光。………物凄く遠いのに、とっても眩しくてね…」
まるで朝日の様に、暁の空を照らし……雲を貫き、天に手を伸ばしていた。
神々しい、光の柱。
希望の…。
「…あれを見た時…思ったの。………………あれは…希望だわ…って。………きっと何かが、動く。どんどん、動いていく。………何かが、変わろうとしているって…思えたの。………だから、私は貴方方を迎えたのよ。………………私なんかでよければ、全部教えてあげるわ」