亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
―――『ノア』。
それが、化け物の名前。
世間では化け物、怪物、と恐れられているが、イーオからすればとっても優しいお友達…らしい。………噂と全っ然、違うが。
「…ノアはね、魔の者なの。他の魔の者よりも魔力が強過ぎていて…あと、ちょっと特殊らしくてね。………今まで、大体十人以上のデイファレト王の魔の者だったらしいわ。…歳は、もう本人もよく分からないくらいよ。………千歳は越えている気がするって言ってたわねぇ~」
「…千って…!?」
そのノアとやらが魔の者であるかとは分かったが………千年も生きている?
…普通の魔の者の寿命は人間とほぼ変わらないと聞くが……千年生きているなど………確かに、特殊な魔の者だ。
「………魔力が強過ぎ、かぁ…。………そういえば前…お城の方から感じた、あの半端無い魔力…。あれがそうだとすれば……あー…納得いくわー」
思い出しただけでも身の毛がよだつ…と、ブルリと身体を震わせるイブ。
「……十数人の歴代のデイファレト王に仕えていた魔の者…とすれば………王政が崩壊する五十年前までも、ずっと王の魔の者だったのですか…?」
「ええ、そうよ。…ユノ王子の御祖父様にあたる51世のお傍にも、ノアはずっといたわ。…魔の者共通の性質のせいか…陛下がとっても大好きでね。今思えば、そう………………金魚の糞みたいだったわ。………あ~おかしい~!」
自らの言葉がツボに入ってしまったのか、笑いながら車椅子の肘掛けをバシバシと叩くハイテンションなイーオさん。
彼女の笑いが止まるのを、一同はじっと待った。