亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
…千年の知識と経験を持ち合わせた、異常に魔力の高い魔の者が守人とは………最強の番犬ではないだろうか。
…相手が悪すぎる。
魔の者がいないフェンネルはただでさえ、魔の者に関する情報が少ないというのに。
…今一番、フェンネルにとって対抗手段が無い相手は、その魔の者なのだ。
………昔の、かの狂王様の悪政が悔やまれる。
重い空気を背負い、やつれた様に俯く二人だったが。
………不意に、その背後からくぐもった幼い声が飛び出した。
「―――……じゃあどうすれば………お城に入れるの…?」
…今までの話を聞いていたのか、と突っ込みたくなるほどぼんやりした口調のレトの発言に、イブは目を丸くした。
「…おおぉ……レトレトバルバル!あんた見掛けによらず超積極的だね!?」
「……………………レトで…いい。………だって…お城に入らないと……駄目…だから……」
椅子に腰掛けたまま膝を抱え、マントに埋めた小さな口でボソボソと呟くレト。
…この少年は勇者か、はたまた愚者か。