亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
レトの言う通り、城に入らない限り王政復古は決して叶えられない。
何としてでも、その術を見付けなければならないのだ。


レトの何気ない問いに、イーオは少し考えた末にこやかに口を開いた。

「……正直な話、私にも分からないのだけれど………お隣りの部屋で眠っている王子様なら、入れるんじゃないかしら?………お仕えしていた大好きな陛下の実の孫だもの。きっと入れてくれるわ。………その時の気分次第だけど…」

ノアったら気分屋だから…と、イーオは要注意事項を笑いながら言う。

……なんて面倒な守人なのだ…と呆れるリストだが、とにかく…これで城に入れる…かもしれない方法は分かった。
それしか無いのなら、それに縋るしかないだろう。


(―――…あの王子様が起きて……且つ、陛下と合流出来たら……すぐにでも城へ直行だな…)

…ローアン達が今現在どの辺りにいるのか分からないため、合流もいつになるのか分からない。
伝達も遅れる場合がある。
おまけに王子様もいつ目が覚めるのかも、皆目見当がつかない。



…時は、刻々と迫っている。

もう日が暮れた今日、何もすることが出来ずにただ焦燥にかられるばかりの夜を、一体どう過ごそうか。












「………魔の者って………神様の使いなんでしょう…?」

マントに埋めていた顔を上げ、ボソボソとレトは呟く。なんだか眠そうな半開きの幼い目が、じっとイーオを見据える。

「………ええ、そうよ。………創造神アレスに絶対忠誠を誓う、神の使いよ」

「………じゃあ………魔の者も精霊と同じ……神様だね。………神様なら……怖くなんかないし……悪いことなんかしないよ…。………………良かった…」


…レトは何故か独りで解釈をし、ホッとした様に安堵の表情を見せた。
彼に言わせれば、神様は人畜無害。ならばそのノアとやらに恐がる必要もないらしい。


………この少年は、ちゃんと話を聞いていたのか。
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