亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
「……なんか無理矢理過ぎない?………神様の使いだからって安全って訳じゃないじゃん。…魔の者がどんな生き物か知らないからそんなこと言えるんだよ。…魔力も半端無いし、目茶苦茶強いんだから―…」
「………………神様は………みんな優しいよ……」
「嘘だぁ―!神様ほど意地悪なのはいないって!災いだなんだ―って、すぐ癇癪を起こ…」
「それは人間が悲しいことばっかりするからだ!」
レトの解釈に対し呟かれたイブの抗議に………唐突に、レトの厳しい言葉が放たれた。
…今まで口を閉ざし、話しても消え入りそうな小さな声だったレトが………控えめだが……怒鳴ったのだ。
…そのギャップに、レト以外の全員が口を閉ざした。
……急にしんと静まり返った室内で、レトだけの声が、やけに響き渡る。
「………………貴方方はいつも…燃える炎や、吹き渡る風や、流れる水を……どんな目で見ているの…?………………僕達は、違う。……全てに支えられて…全てに生かされている…。………全てが、神様なんだ。……全てを与えてくれるのは神様。なのに………強欲な人間は、神様を忘れて、捨てて………悲しいことばっかりする………………精霊が泣いているのに、気付かない。……皆…皆泣いてるのに…。……………悲しくて…もう止めてって、神様は仕方なく災いを起こすんだ……。………だから…神様は悪くないっ………怖くないもん………本当に怖いのは………人間だもん………………………」
………たどたどしい口調だが、熱の込もった言葉の数々。
その幼い声には、狩人としての純粋な…深い信念に溢れていた。
………狩人とは、なんて真っ直ぐで……純粋な生き物なのだろうか。
レトの必死な熱弁に半ば感心していた、のだが……反面………リストは次第に、冷や汗をかきはじめていた。