亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
「………い…意地悪なんかじゃ…」
「…おい」
「………神…様は……絶対…に………」
「おいおいっ……!?な…泣くなよ馬鹿!!」
…さっきまでの眠そうなぼんやり顔は何処へ行ってしまったのか。
叫んでからものの数秒で少年の紺色の瞳は潤み、涙の膜を張ったかと思いきや、ブワッ…と涙腺が一気に崩壊した。
ランプの揺らめく明かりに反射して小さく瞬く涙の粒が、とめどなく溢れ出てくる。
………泣かれると、どうすればいいのか分からなくなる。
「…あーあ。泣ーかしたー泣ーかしたー。いたいけな少年を泣かすなんて最低―」
「…ああそうだな、お前最低だよ!何さりげなく責任転嫁してやがる!」
元を辿ればお前のせいだろと、そっぽを向いているイブに指摘する最中で、レト少年の号泣は更にヒートアップしていく。……今までずっと、寂しさやら何やらに耐えていたのだろうか。
堪えていたものがとうとう爆発したかの様に、レトはその場でわんわん泣き喚いた。
「父さん父さん父さん父さん父さん父さん父さん父さん父さん父さん父さーん!!父さ―ん!!父さん何処?何処にいるのー!」
「お父さん呼び出したよこの子!?」
椅子の上で膝を抱え、マントに顔を埋めたまま肩を震わせて泣き続けるレト。
片手でテーブルをバンバン叩いたり、突っ突いた達磨の様に前後左右に揺れたり、マントの内にずらりと並んだたくさんのナイフを見境い無くそこら中に投げたり…。
…見る見る内に加速していくそのヒステリックな様に、傍観している二人はやや引いていた。
よっぽど、父親が恋しいのだろう。嵐に巻き込まれるまでは親と一緒であったと聞く。
…だがしかし、その寂しさ故に刃物を人に向かって投げるのは、少々いただけない。