亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
13.夢を、見ていた
―――…刃が、好きだ。
いつ何時でも、それは冷たく。
いつ何時でも、それは沈黙も貫き。
いつ何時でも、それは虚しい殺意を抱いている。
刃は、何者も裏切らず。
何者にも、従わない。
瞳を刺す煩わしい陽光や、我が物顔で割り込んでは闇を掻き消す灯を。
それは身一つで弾き返す。
その切っ先を外に向ければ、主を守る武器となり。
内に向ければ、主を危める殺人鬼と化す。
鈍い光沢を放つ従順な刃を肌に食い込ませれば、例えそれが主の身体であろうとも、傷をつけ、皮を裂き、肉をえぐり、骨を削る。
ただ貪欲に、血を貪る。喰らう。吸い上げる。
獰猛な獣の様に。
そんな無機質な殺意を。
俺は、愛しいと感じる。
…俺は、狂っているだろうか。
狂っているでしょうか。
父上。父上。
威厳高い、敬愛する………私欲に溺れた愚かな、愚かな愚かな愚かな、父上。
…兄上。
…俺は、もうすぐ貴方方の前で、この仮面を外すでしょう。
リイザを……仮面の下のリイザを知らないでしょう。
愚かだと罵ればいい。
歎けばいい。
俺は、愚者になってみたいのです。
少しばかり…
愚者を、演じてみたいのです。
貴方方、そっくりな。