亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~




けれど…そう言えば、ユノはとても怒るだろう。
延ばした手も、叩き返されてしまうだろう。


何故なら、彼自身が……レールから下りる気が無いからだ。

王など止めてしまえ、という言葉は…これまでの彼の人生を否定するのと、一緒だから。

彼の決意はどんな思いで固めたものなのだろうか。生半可な決意ではない。

その決意を無に帰すのは、とても楽な事だろう。だがそれと同時に、残酷でもある。






だからレトは、彼に何も言えない。
嫌なのに、それを懸命に全うしようとする彼を、止めることなど出来ない。


だから、僕は。















「…僕の考えは変わらないけれど………少しだけね、違う考えが加わったんだ」

「………違う…?」

「………イーオさんの話を聞いてて…ちょっとだけ。………………僕、王にはなりたくないよ…だけど………………………………この国に王様は、必要なんだよ」



暗闇の中で、ユノは微笑を浮かべた。堂々と、胸を張って。




「………王様の誕生を、神様も民も皆…待ってる。皆…平和を待ってる。………君も、春を待ってる」

「………」






………春。まだ見ぬ、温かな季節。平和と共に、それは訪れるかもしれない。まだ望みはあると、イーオは言っていた。








「………僕が王になることでこの国が平和になるのなら……僕は、王になるよ。僕は、僕なりのやり方で………皆のために、平和を作ってあげる。………どんな手を使ってでも…」





………何をどうすれば他人のためになるかとか、国の平和だとか…難しいことは、よく分からない。けれど、ユノは…。


「………………ユノは…それでいいの?」



そのレトの問いに、ユノは直ぐさま……「いいよ」と答えた。
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