亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
そのつぶらな瞳でレトとユノをじっと見詰めながら、首を傾げている。
「………僕、あの鳥の事しょっちゅう忘れてるよ…」
「そう…?」
「だって君に懐いているんだよ?…親だと思っている君にべったりじゃないか」
…ある意味神出鬼没の雛鳥。
そんな話をした後、レトはアルバスに視線を移した。
半開きの紺色の瞳と、潤んだ漆黒の瞳が交わる。
レトは一つ息を吐き………小さな雛鳥に、笑った。
「―――…おいで、アルバス」
小さく手を振ると、真っ暗な雛鳥のシルエットは嬉しそうに跳びはねて駆けてきた。
アルバスがついて来るのを確認すると、二人は手を繋いだまま。
前へ、走り出した。
静かな、雪の夜。
並ぶ小さな二つのシルエットと、その後に続いていく小鳥。
深い夜の闇は、全てを飲み込み、全てを隠し、全てを消し去っていく。
漆黒の奥へ、奥へ。
人知れず………僕等は、夜に塗れていく。
夜を、駆け抜ける。
僕等は、駆け抜ける。