亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

城外に逃げれば最後、元々頭のいいエコーだ。警戒され、この次は容易に入れまい。それに………こちらはあまり時間が無いのだ。



…左右から襲撃に合う前に、後ろに追い付かれる前に、また道が遮られる前に。

何がなんでも、城に入り込む。
扉をこじ開けてでも。はたまた穴を空けてでも。破壊してでも。


「…お城の扉って物凄い頑丈じゃん。ここのお城も例外じゃないって。…蹴破れないだろうし―…ストレート決めてもひびが入るくらいだろうしー………」

「…魔術で破壊するしかないだろ。俺とお前、壊すのは得意だろ」



呪文や魔法陣は使用しない、魔術を直接対象にぶつける原始的な魔術は、フェーラ特有の技であり破壊に一番適している。

二人が本気を出せば、荒野一つ陥没させることくらい容易い。

走る二人の頭上に、後ろから跳躍してきたエコーが一匹襲い掛かって来たが、ちらりとも見ようとせずイブが長い尻尾でエコーの身体を貫き、放り投げた。

その脇で、イブの尻尾の存在に驚きのあまり再度言葉を失うドール。
勝手に進められていくこの二人の話を聞きながら、レトはようやくこの介入者二人の意図を理解した。



………この危機的状況から救ってくれたばかりか…どうやらこのまま城に連れていってくれるらしい。

…お説教とやらが後で待っているらしいが。






「………暴れるんじゃねぇぞ…王子様」

「………」

…突入、を決行するらしい二人は、集中するために急に口を閉ざした。低い声で、リストがユノに言う。
…ユノは何も言わず、ただ頷いた。















二人の走るスピードが、更に加速した。

風になっているような錯覚さえ覚えた。





冷たい空気を全身で押し退け、吹雪の下をかい潜る。周囲で動くもの全てが、止まっている様に見えた。
< 918 / 1,521 >

この作品をシェア

pagetop