亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



ものの数分、とは言っていたが、室内の温度はものの数秒で上昇していった。
疎らに散りばめられたまるでランプの様な火玉は、その小さい態に似つかわしくない熱気を放っている。

…だが、室内の温度は暑いという程ではない。何と言うか………地味に生温い。



「さて、これでよろしいでしょうか。………夜更けも近いです。お話も早く終わらせましょう。睡眠不足はお肌の大敵ですよ」

「………話って……」

…真面目に話す気など無いと思っていたのだが、なんとノアは先程とは打って変わって自分から切り出しているではないか。
どういう風の吹き回しだろう。


「ご心配無く。私のご機嫌なら、そこのちびっ子達とのふれあいでだいぶ良くなりましたよ~。…貴方が願っていた通りに」

「………あー…っと…」


………少し前に口から漏れた自分の呟きは、何故かノアの耳に入っていた様だ。
………どうやらこの城内での事は、ノアには全て筒抜けらしい。周りに誰もいなくとも迂闊に下手な事は言えない…。

リストは罰が悪そうに苦笑いを浮かべ、目を泳がせた。


「貴方のその、突っついたら必ず返してくれる律儀なリアクション…私は好きですよ。…癖になりそうです。………さて、本題に移りますか」





…言いたい事だけ言いっ放しにし、ノアはまるで目に見えない椅子に座るかの様に、何も無い空中によいしょ、と腰掛けた。
長い緑の髪は、羽毛の如き軽々さでフワフワと浮き、時折靡いている。





「…貴方方のお話とは……まぁ、考えなくとも既に答えは出ておりますがね…。簡潔に述べますと………我等が創造神アレスが警告を下した、世界の均衡の崩壊。及び、その均衡の改善の第一歩として命じられた、この国の王政復古に…ついて。……だと、思っていますけど?」
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