亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
…余計な部分を省き、最低限の要点だけで絞ったノアの答えに、リストは無言で頷いた。
「………その通り、だ。…この城の守人であるあんたも勿論知っているだろうが……神声塔でのお告げによると、その王政復古とやらの期限が、戦士の月が上る夜。………明日だ。明日の夜だ」
時間は、一日切った。
今のところ、バリアンの刃にかかることなくユノ王子は保護出来ており、城にもなんとか無事着いている。
事は順調に進んでいると思われる。
このまま何事も無く明日を迎えて、夜の訪れと共にユノ王子を君臨させれば万事解決だ。
…何も、起こらなければ。そしてこのノアが……非協力的な、変な真似をしなければ…の話だが。
宙に腰掛けるノアは、何処か上の空で天井を見上げ、首を回している。
…緑の髪の奥から覗く切れ長の目が、ひんやりとした冷気を孕んでリストに視線を送った。
「無論、存じております。偉大なる神の言葉は、すぐに耳に入ります故………今回の騒動については、全て分かっております」
「…だったら話は早い。………全部分かっているなら…」
………頬杖を突いたまま、リストはちらりと向かいに座るユノを一瞥した。
二人一緒に並んで座っていたレトとユノは、その意味深な視線に揃って首を傾げる。
……二人の耳に入らない様にと、リストは小声を漏らした。
「…知っているな。………予言の、話も…」
「―――…予言?」
…途端、のんびりとしたレトの声がリストに投げ掛けられた。
普通の人間より聴覚が優れているレトにとっては、リストの小声など聞き取るのは容易いことだった。