亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
今までの話題では初めて聞くその単語に、レトは敏感に反応した。
当然、レトを介して聞いたユノは、訝しげな表情をリストに向けた。
どこと無く低い、威圧感のある王子様の声が室内に響き渡る。
「……予言?…何さ…その予言って…。………何を知っているんだい?」
占術をしない限り、予言の内容は分からない。
ましてやユノは、神声塔でのお告げを受けてから今日に至るまで旅を続けていたのだ。予言など、知る由も無いだろう。
ユノは席を立ち、リストに詰め寄ろうとした。
ズカズカと前に出るユノを、レトは少し不安げな様子で見守る。
「………お前らは知らないだろうがな。…つい先日、予言があったんだよ」
「………………どんなだい?」
眉間のしわを更に深め、ユノは言った。
…予言の内容は勿論、このユノ自身が大きく関係している…彼が鍵と言っても過言ではないものだ。
はたして予言の内容を本人に言っていいものか。
………リストは数秒間迷った末、予言の内容を明かす事に決めた。
勝手な独断だが、これが一番いいのかもしれない。
「………重大な話だからな。適当に聞くんじゃないぞ。特にお前、王子様。お前は耳かっぽじってよく聞け。………いいか、予言の内容は…デイファレト王の君臨、つまりお前が王になる際に起こる事が…」
…一度咳ばらいをし、真面目な表情でリストが話を切り出した。
…その時、だった。
話題が肝心な予言の内容に触れようとした途端………次の言葉を吐こうとしたリストの口が、閉じた。