亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
「………何?…言いかけるのは止めてくれよ。…僕が王になる際に起こる事?…それって何?………………ねぇ…聞いてる?」
…切り出したかと思えば急に話を断ち、何故か黙り込んでしまったリスト。話し掛けても返事は疎か、何の反応も見せない奇妙なその様子に、ユノは首を傾げた。
その後ろで大人しく座っていたレトは、唐突に態度が豹変したリストの異変にいち早く気が付いた。
(―――…?)
瞬きを繰り返すレトの瞳が映しているのは……動かぬリストの顔と、膝の上に添えられた拳。
…暑くもないのに、何故か彼の額からは、珠の様な汗が滴っていた。心なしか、顔色も悪い。固く結ばれた唇は、なんとかして開こうとしているようにも見える。
そして両拳は……小刻みに、震えていた。
「………ちょっと…急にどうしたの?」
さすがのユノもリストの異変に気が付いたのか、声音を和らげ、心配そうに彼の顔を覗き込んだ。
…が、やはり返事は無い。
…直後、リストは何故か絶え絶えに息をし始めた。
…段々と苦しげに歪んでいく彼の表情。
二人が見詰める中、震える手で胸を押さえ、ゆっくりと前屈みになった。
そしてそのまま、髪の隙間から………カッと見開いた鋭い視線を、リストは向けた。
「―――………どういう…つもりだっ…!?………てめぇ………!!」
殺気にも似た凄まじい怒気を孕んだ眼光を向ければ………その先にいる人物は、にこりと微笑んだ。
「―――…あらやだ、そんなに見詰めないで下さい。すみませんが、お喋りは終いです。またいつか、ということで」