亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
「………中で寝たらいいじゃないか…。………城内はさすがに安全だよ…?」
「………そうかも…しれないけど………やっぱり僕、部屋の外で寝るよ。………寒いの…慣れてるから………大丈夫…」
城の更に奥。
数十年間、人の出入りが無かったらしい静まり返った廊下。
一足遅れて追い付いてきたノアに促されるまま、城内を歩いた。
天井から床までの、限られたスペースを埋め尽くす夜の闇を掻き分けて進んで行けば、一定の間隔で左右に並ぶ扉の群集が見えてきた。
その内の一室に入れば、そこは先程の部屋とは違って家具の種類が多かった。
テーブルと椅子がメインの応接間ではなく、こちらは幾つか寝台が置かれた寝室の様だった。
その部屋も外と大して変わらず冷え冷えとしていたが、直ぐにノアが暖めてくれた。…宣言通り、生温かった。
その後直ぐに…ノアは、「お休みなさい」の一言を最後に、フラフラと何処かへ行ってしまった。
壁を通り抜け、真っ暗な廊下の奥へと消えていくノアの背中。見えなくなっても、レトはじっと廊下に佇んでいた。
熱で少し苦しげなドールを長い間使われていなかった誰かの寝台に寝かせ、レトはずっと彼女に貸していたマントを羽織り………空いた寝台にではなく、何故か、部屋の外へと出た。
…退室する間際、室内で寝る様にとユノに促されたが、レトはやんわりと断った。
「何かあったら…直ぐに呼んで。………僕、ずっと…部屋の前にいるから。………………お休み…」
「………………お休み」
二言三言会話を交わし、レトは暗い廊下へと身を投げた。