亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
美しい装飾が施された寝室のドアをしっかりと閉め、その場に腰を下ろしてそっと寄り掛かる。
肌を刺す冷気から身を守るため、全身を覆う様にマントを羽織ると……何故か、マントは妙に温かかった。
しばらくドールに貸していたのだから、温もりはそのまま移るかもしれないが、やけに温かい。
不思議に思い、羽織ったマントに目をやると…。
「………………アルバス…」
正直、忘れていた。
マントに付いているフードの中には、丸く縮こまって熟睡する小さな黒い雛鳥の姿があった。
小さな身体を使って、懸命に呼吸をしている。…ちゃんと、生きている。
人間よりもやや体温が高いアルバスは、どんな防寒着よりもレトを暖めてくれた。
小さな黒い雛鳥をフードからそっと取り出し、抱き枕の様に胸に抱いた。
そうすると…とても温かかい。
少しリズムの速い雛鳥の鼓動が感じられ、妙に落ち着く。
…そのまま、レトは目を閉じた。
早く寝てしまいたかったが………寝る前に色々と考え事をしてしまうのが癖で。
静かな脳裏に、自分の囁き声が木霊する。
………あのフェンネルからの使いの二人は…大丈夫だろうか。
…今、どうしているのか。
………ノアは、何処に行ったのだろう。
…ずっと笑っていたけど………本当の顔は、笑っていなかった。
………明日…明日の夜が最後。
全部、最後。
ユノが、王様になる日。
………無事に、明日になればいいけれど。