亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
17.或る短き愛の話
『―――…無口男!髭面!老け顔!野獣!……ちょっと…無視?…無視は無いでしょう!』
『――…お偉いさんに従順な犬かと思ってたら………百聞は一見に如かずね。蓋を開けて見れば、反抗しまくりのただの人間だわ』
『……守ってくれなくったって結構!…生まれた時から守られっ放しで………もう飽き飽きしてるのよ』
『………女なんかに生まれたくなかった。…最初から人生設計が決まってるもの。私の夢は、政略結婚の末のお嫁さんです…ってね』
『人殺しは………嫌いに決まってるじゃない。………人間のすることじゃないもの。人殺しは大嫌いだけど………………貴方は嫌いじゃない。貴方は…………可哀相…』
『帰りたくない』
『帰りたくない』
『帰りたくないの』
『連れてって。一緒に連れてってよ。お金でも…何でもあげるから』
『お願い。お願いだから。待って。行かないで。置いて行かないで』
『…あたしを』
『―――ほら、見て』
『見て、ザイ』
『―――可愛いでしょう。貴方の赤ちゃんよ』