誘拐少年―Little Summer―

少しでも動こうとすると、今にもお互いの唇が触れてしまいそうなほど近い距離。

名前も知らない彼の、安定した息遣いが間近に聞こえる。

両腕はしっかりとシーツの上に固定されていた。


「俺たちも…やる?」


また、笑った。

何を考えているのかわからない。

漆黒の瞳の奥には何も見えない。

それなのに――吸い込まれる。


いいよ。と言ったわけじゃないのに、彼はさらに距離を縮めて。

目をつむる前に見えたのは、不気味に歪んだ笑顔。

重ねられた唇を受け入れた。

最初は、まるで子供がするような、触れるだけのキスだった。

真っ暗な視界の中、一瞬離れた吐息に

瞳を開くと、ニヤリと口角を上げた彼が映る。

――やっぱり、綺麗な顔立ちだ。

そんなことを考えていたのもつかの間、今度はさっきよりも早いスピードで唇を重ねられる。

重ねられて、擦れあって、時々あたしの口内に入り込んでくる、生暖かい…彼の舌。

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