誘拐少年―Little Summer―

「…っ、」


ファーストキス、だったのになぁ…。

こんなに簡単に、“初めて”が奪われるなんて思ってもみなかった。

だけど、嫌ではなかった。

目の前にいるのは今まで見たことがないくらいの絶世のイケメン。

キスが速度を増す中で、押さえ付けられていた右の手首に自由が戻る。

と、知らぬ間にセーラー服と中に来ていたキャミソールがまくり上げられていたことに気づく。

抵抗を試みても、男の人に力で勝てる訳もなく。

無意識に溢れ出す雫で視界が霞む。

顔が熱い。

口の中に熱が篭る。

強く早く脈を打つ鼓動。

彼の左手が、あたしの腰を撫でたのがわかった。

薄れていく思考のなかで、唐突に我に帰る。


…っていうか、あれ?
どうしてこんなことになってるの?


学校帰り。

麻衣(マイ)と手を振って分かれて。

iPodで音楽を聴きながら。

…そしたらいきなり、後ろから誰かに腕を捕まれて。

それで―――


「――…っ、ちょっと待って!」

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