一緒
携帯だけでもお互い持ってて良かった
俺の家からそう離れてない自動販売機の前で待ち合わせして、落ち合うことができた

「誠一(セイイチ)は?親父さん手ぇ上げなかった?」

慶介が心配そうに顔を覗き込んでくるけど、俺はなんとなく目を合わせづらくて「まぁ、うちは」とだけ答えて顔を逸らしてしまった

「・・・」
「・・・」

黙っていればよかったのかもしれない
別に自分からバラす必要は無かったのかも

「後悔してるか?」

俺の考えていたことが分かるみたいに慶介が沈黙を破って訊いてきた

「・・・泣いたからな。見ちゃうと、やっぱり」

「泣いたって、おばさん?」

「そう」

なんかフワフワした感じだ
言うまでは緊張したし声も手も震えた
だけど不思議なもんで、言ってしまった今となっては後悔も確かにあるけどこれが現実な感じがしない

「俺、コンビニで金下ろしてくるわ」

立ち上がった慶介が俺に手を差し出す

それを取って立ち上がると、そういえば自分も財布の中にはあまり金を入れてなかったことを思い出した
< 2 / 10 >

この作品をシェア

pagetop