一緒
今日、財布に泊まるだけの金さえ入れてなかったのは
どこかで期待してたからだ

―――なんだかんだ言っても、きっと理解しようとしてくれるだろう

一人息子だという自分の立場を計算に入れて、昔じゃあるまいしまだ25なんだから親にとっても取り乱すほどたいしたことじゃないと思い込んでいた




「誠一?なんか食うか?」

考え込んでた俺は、慶介に肩を叩かれてハッとした

「あ、いや今は・・・」

いい。と言おうとして言葉に詰まった

――なんで・・・

「誠一?」

「なんでおまえ笑ってられんの?」

頭抱え込んでる俺と対照的に、慶介はいっそのこと普段よりも穏やかな表情で笑ってる

そういえば慶介だって金の用意なんかしてなかったし荷物だって準備してなかったから財布とケータイしか持ってなかったじゃないか

まさかこんなことになると思ってなかったのはコイツも同じなんじゃないのか?

「じゃあ、誠一はなんでそんな死にそうな顔してるわけ?」
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