ツインの絆

広志は野崎源次郎が野崎組の頭をしていた頃の最後の見習いだった館山精一、今では65歳になる職人の養子だ。


この春大学を卒業したところの22歳だが、小学校の頃から二歳上の山根悟と二歳下の野崎和也に誘われて近くの空手道場に通い始め、今でも夜になると足を向けているから、いざとなれば空手の手法で皆を守ってくれる。



初めはひ弱で何もかも遅れの子供だったが、悟と和也に刺激されて今では野崎組の総務部長、と勝手に名刺を作り、一人で全ての雑用をこなしている。


その上大学時代に税理士の資格を取っていたほどの秀才で、道子の計らいの下、野崎組の事務所の隣には小さなスペースを貰い税理士としての仕事も受けている。


ちなみに【鳶の化身】のような野崎組会長の道子に【鳶の子】として認められているのがとび職人のあきら、顧問弁護士を名乗っている悟、総務部長を名乗っている広志、それにコンサルタントを名乗る和也だ。



特に三人はとびが大好きだが、とびになれなかった若者だ。

だから自分たちの仕事をこなしながら野崎組のために動いている。


そんな中で孝輔は生まれてこのかた、野崎組と言う名前から受けるイメージの、男くさい世界に身を置いたことが無かった。


大輔は剣道に熱中しているから、汗臭い男の世界に浸かっているが… 

そんな孝輔でも女子高生の難儀を見て見ぬ振りは出来なかった。

結果的には腕に痛みを感じるほどの痛手を負い、顔も殴られて唇が腫れ、目の下もあざが出来ている。



「家に帰ったらおばあちゃん達が大変だ。」



と、二人は顔を見合わせて苦笑しながら、能見町と言う所に住む春香がバスに乗るまで付き合っていた。


能見町なら中学は同じ校区のはずだが、全く知らない女学生だ。
< 10 / 205 >

この作品をシェア

pagetop