ツインの絆
父の孝太は、安城で借家暮らしをしながらとび職人として、祖母と母とで暮らしていた。
ある時道子おばに、まるで源次郎のようだと言われ、いきなり愛され… 数年で野崎組のかしらとして頑張ってきた、と聞いた事がある。
そしてここに住むようになり、離婚したものの、死んでしまった妻と暮らしていた和也を引き取り、
皆で愛して育てようと妻の妹、すなわち自分たちの母・千草と再婚して、
水木の両親までここで一緒に暮らすようになったのだ。
小学校の低学年の頃、担任の先生から、
「野崎君の家は皆で暮らし、理想の形ね。先生、羨ましいわ。」
と、言われた事がある。
その頃も、6年生だった和也は、登校してもほとんど保健室で、昼寝をしたり、好きな本を大きな声で読み、保健室の先生に聞かせていた、という変わった事をしていた。
しかし、トラブルにしていたのは、母の大袈裟な反応だった。
和也のことを全く理解していなかった母が、普段は無関心のくせに、学校の手前、
保健室にも押しかけて、騒ぎを大きくしていた。
考えれば… 母が出来が悪かった。
母の葬儀の後、おばが父を慰めていた。
再婚など勧めて悪かった、とも言っていた。
父は母との結婚には乗り気ではなかったのかも知れない。
母は、仕事に一生懸命の父のお陰で贅沢が出来ていたのに… 裏切った女だ。
だけど俺たちはその母から生まれた。
だから水木の祖父や祖母もあんなに怒ったように泣いていたのだ。
孝輔がおとなしいと言うことは周知されているが、
この大輔も肝心の事はうまく言葉に出せなかった。
それで自分の将来については悶々としたものを持っていた。