ツインの絆
大輔が、とにかく明日からは広志の所にいるように、と孝輔に約束させて部屋を出て、
隣の自分の部屋のドアを開けた時、その隣の部屋のドアが開き、
眠っているはずの父が顔を出した。
その顔は真剣そのものだ。
「父さん… 」
「大輔、ちょっと話があるから下へ来い。」
「大輔、お前は何をこそこそしているのだ。真理子の事で動揺しているのかと思っていたが、孝輔に何かあったのか。
考えてみればお前が広志の所へ行ったのもおかしい。この際、隠し事はするな。
俺はもう何を聞いても驚かん。」
その時の父は、まさに猛禽類の鳶を彷彿させるような鋭い眼差しで大輔を見ている。
一瞬目が合った大輔は,思わず目を伏せてしまった。
父は恐ろしい目で自分を見ている。
怒っているのだろうか。
そう言えば、この眼… 和ちゃんが母さんを罵倒した時に見せた眼だ。
あれは… 原因は分からなかったが、あの後、和ちゃんは家を飛び出して夜になっても戻らなかった。
皆で探し… 結局夜中になってから、あきらさんが眠っている和ちゃんを背負い、
悟さんの手を引いて戻って来た。
あの時は,父さんもすごく母さんを怒った。
水木のおじいちゃんも怒っていたが…
いつもはおとなしい父さんが怒っていた。
そうか、この眼は… 怒ると出る野崎の目だ。
あの時、幼かったから原因は分からないが、今になれば、無性に知りたい。
大輔は父の表情に戸惑い、うつむいたままそんな事を考えている。