ツインの絆
「大輔、お前まで父ちゃんの中から出て行くのか。
お前だけはずっと父ちゃんの傍に居てくれると思っていた。
何だか一度に隙間風を感じてしまう。
何故だ。俺は一生懸命お前達と向き合ってきたつもりだったが… 」
父は大輔の予期せぬ言葉を口にした。
よく理解出来なかった大輔だが、慌てて考え付く言葉を出した。
「父さん、そんな事は絶対にないよ。俺はずっとここに居たいと思っているよ。
それに,父さんには和ちゃんだって居るじゃあないか。
和ちゃんは今でも父ちゃん、父ちゃんって… 」
父にとって和也は特別な存在と言うことは分っている。
だから思わず口にした大輔だったが…
「和也はいつまで経っても可愛い子供だが…
実際は俺の手の届かない世界に住んでいる。お前だって分っているだろう。
呼べばいつでも飛んで来る、と言って、実際ひょんな時に顔を出してくるが、
会いたいからと言って俺の口からそんな無様な事はできるわけが無い。
5年前、和也がおじさんの支援の下アメリカへ行った時からわかっている事だ。
淋しかったが,和也のためにはそれが最善だと思った。
あの頃あいつは千草とぶつかってばかりいた.
俺も父親としてあいつの可能性を伸ばしてやりたかった。
案の定、あいつはどこでも楽しんで羽ばたいている。
その頃からお前が俺になついて来たような気がして、嬉しかった。
真理子と孝輔はちょっと波長が違っていたが、お前のはつらつとした子供らしさは、見ていて元気を貰った。」
そう話す父の眼差しが次第に柔らかいものに変って来ている。
それを感じた大輔も、それまでの緊張していた気持がほぐれて来た。
「俺も父さんが見てくれていることがわかって嬉しかったよ。
父さんは,母さんがあんな事をしてからも仕事に精を出していた。
山根のおじさんたちが、しばらく休むように言っても、
高い所で風を感じていた方が気持が和らぐ、と言って体を動かしていた。
俺それを見て、やっぱり父さんはすごい、強いと思った。」
大輔のその言葉に孝太は苦笑している。