ツインの絆
昔は… 家族で出かける時は必ず父は和也を肩車していた。
目を離すとどこへ行くか分らないから、肩車をしていれば安心だったらしい。
母は大輔と孝輔の手を引き、春子が真理子の手を引いていた。
それが、大輔が剣道を始めた三年生の頃から変った。
母は真理子と孝輔の手を引くようになり、和也が中学に入ったから、父は大輔を肩車、と思ったらしいが大輔の心は、和也よりかなり大人だったという事だ。
「それで孝輔に何があったのだ、大輔。子供の事を親が知らないのは悲しい事だぞ。
あいつは母さんっ子だったから、この二年、かなり傷ついて来たのだろう。
片親になっても俺に近付かなかった。
それまでの生活があったか,ら戸惑いも大きかったかも知れん。
さっきも言った様に、お前が居るからと安心していた事も事実だが、考えてみれば、お前たちだっていつも一緒と言うことではない。
あの様子では多分何かが起こってしまったのだろうが、あいつの事だ。
俺が直接聞いても話さないだろう。だからお前に聞いているのだ。」
父は話をまた孝輔のことに軌道修正して来た。
孝輔のことは… 父に心配かけないように秘密裏に対処しようと考えて来たが、やはり父の目を誤魔化すことは無理のようだ。
「そうか… そんな事があったのか。」
大輔が広志に話したように父にも全て話し終えると、孝太は怒ったような険しい顔をしてつぶやいた。
「分った。これからしばらくは仕事を休んで、俺が孝輔の傍に居てやる。
女から電話でもあるものなら、俺の息子に手を出すな、と怒鳴りつけてやる。
いや、こっちから出向くべきか。」
と、興奮したような声になり、孝輔を守る気満々と言う態度だ。
その父の様子に大輔は驚いた。
嬉しい事だが…