ツインの絆
「仕方が無いよ。まだ皆が授業していると言うのに、母さんが迎えに来て、真理ちゃんと孝輔を連れて行くのだから目立つ。
真理ちゃんは口が達者で、皆から注目されれば得意になることはあっても、いじめを受けてくよくよするようなタイプではない。
だけど孝輔はおとなしいから、クラスのやつらがからかうのだよ。
それに手にしているバイオリンも、あの学校では特別な感じだったから…
あ、でも大丈夫だよ。孝輔に何かするような奴は俺が脅してやったから。」
父が、いじめ、という言葉に反応しているのは見て大輔は、敢えて大丈夫、と言う事を強調した。
「そうだったのか。俺は何も知らなかったが大輔が居て良かった。
ああ、お前なら頼りになる。」
大輔の言葉に、それまでとは表情を変えた父が、和やかな眼差しで大輔を見ている。
「そんなのは当たり前だよ。俺たちは強い絆で結ばれている双子だから
どちらかに何かが起こればすぐ感じられるのだよ。」
どうやら父の感情も落ち着いたものになって来たようだ。
「そうか。それで孝輔の容態はどんなものだ。
悪いようなら医者へ行かなければならないだろう。」
「駄目だよ。今病院へ行って検査をすれば体内からヘロインが出て、
規則だから警察に通報されちゃう。そうなれば即学校と家にも連絡があり、
下手をすれば孝輔は退学にされちまう。
少年院へ入れられるかも知れない。
広志さんは、初回だからそうなっても厳重注意だろう、と言っていたけど、
違法ドラッグだから、慎重な動きをしなくてはならない。
父さんもそう思うでしょ。孝輔は高校を中退する気持みたい。
だけど、もしそうであっても、それは孝輔の意思でするべきだし、
俺、孝輔のバイオリン好きだから、何とか続けて欲しい。」
実際の世間のルールは分らなかった大輔だが、
自分の考えられる範囲の言葉で、父に語っている。