ツインの絆

案の定、家に戻ると孝輔の顔を見た母方の祖母春子が泣きそうな顔をして駆け寄って来た。


今まで喧嘩と言うものに全く縁がなかった孝輔が、顔を腫らせて戻ったのだから驚きもひとしおだ。


隣に並んでいる大輔には目もくれず、孝輔の手を掴んでダイニングのイスに座らせ薬箱を持って来た。


今年70になる春子はふっくらした体型だがいたって元気、手伝いの北見則子と二人で家の中の事をやっている。



「本当に転んだのだね。誰かにいじめられたと言う事は無いのだね。大人しいお前が毎日遠くまで通っているから私は心配だよ。」



と、悪気は無いのだが、隣にいる大輔と変わって欲しいものだ、と言うような事を言っている。



ちなみに大輔は、家から自転車なら真剣にこげば10分ほどで行ける高校に通っている。


それに反して、孝輔は駅まで自転車で7・8分、それから電車で30分、名古屋に着いたら乗り換えて、地下鉄で15分は掛かるところの学校へ通っている。


乗り換えの時間も要るから、スムーズにいっても一時間半はたっぷり掛かる。


それを毎日、教科書の入った鞄の他に、バイオリンまで持って通っているのだから好きでなくてはやっていられない。


が、祖母にしてみれば、おとなしい孝輔が毎日名古屋まで通っている事だけでも心配なのだろう。
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