ツインの絆
父とあきらさんが受け止めた… 良かった。
昔から、父やあきらさんに可愛がられていた和ちゃんが羨ましかったが…
自分には母がいる、と思ってあきらめていた。
父は、こんな自分の実態を知れば、どんな風に感じるだろう。
由樹の話を聞いていたはずだが、孝輔は由樹さえ羨ましく感じている。
「それで事情を聞いたかしらが、広志、何とかならないか、と総務部長を名乗り出したところの僕に相談したのだよ。でも、どう考えてもとびにはなれない。
雑用と言っても明美おばさんも手伝ってくれるから必要はなかったけど、
僕の助手にすることにした。
来年になれば夜間高校を勧めて、会計の勉強が出来るような学力を付けさせるつもりだよ。何か特技を身に付ければ、自信を持って生きていけるでしょ。
長い事かかっても構わないから、勉強させる。ちょっと気が弱いけど、とても素直でよく働き、気配りも出きるから、今は僕も重宝している。」
広志は的確に話をしながら、ノート型パソコンを孝輔の傍に運んで来た。
孝輔は、コンピューターは自信が無いなあ、と思いながら由樹の事を考えている。
由樹は8・9歳の頃一度に両親を亡くし、双子の兄と施設で暮らしていた。
それまでの幸せを思い出すたびに、二人で肩を寄せ合って泣いていたのかも知れない。
いや、慰め合っていたのだろう。
良かった、由樹が野崎組で働く事が出来て…
孝輔は初めて事務所に入り、自分と似たような見習いが、はつらつと暮らしている様子を知り、羨ましくさえ感じていた。
そして、自分のことで冷え切っていた心が、いささか温まって来ている事に気付いていた。
初めて足を踏み入れたが、ここは温かさを感じられる所だ。
皆がここを好きだと言う気持がよく分かる。
孝輔は初めに抱いた緊張感が消え、
自分もその野崎のメンバーだ、とパワーを貰ったような気がしている。